歌の覚え方

今月は、皆さんの歌の覚え方とソロボーカルの作り方についてのアドバイスです。普通、歌をとりあえず覚えるのに、一番時間がかかるのは歌詞です。英語の歌となればなおさらです。

多少なりとも譜面が読めるようになると、普通の人はメロディから入り、それから歌詞をつけていきます。これは、逆なんですよ。ですから、本当は譜面を持って練習を始めてはいけないのです。その前にすることがあるのです。

まず、歌詞カードを作ってください。わかGは、自分が歌いそうな約500曲の歌詞カードを、すべてファイルにして保存してあります。皆さんが唄ったり、知っていたりする歌はすぐ印刷できるようになっています。

歌は歌詞から入るのです。まず、歌詞カードを自分で作り、それだけを持ち歩いてください。勤めの人は行き帰りの電車の中は最適な勉強場所です。鎌倉に住んでいる私の3年先輩は、通勤電車で歌詞カードをもって覚えていました。完全に覚えて、自分ですらすら書けるまで覚えます。何十年も、これを守っています。

音を覚えるのは、もっともっと後でいいのです。辞書を引いて歌の解釈をするのもこの時期です。

わたしが沢田師匠のところに通っていた頃は、何週間も唄わせてもらえません。歌詞を読んだり、メロディをつけずに詠ったりするのです。これを”without melody”といいます。

ほとんど人前で歌ったことがありませんが、"All of Me"を6ヶ月もレッスンしていたのです。私が何をやっていたのか想像がつかないと思いますが、これは事実なのです。これは、歌詞がおぼえられなかったわけではありません。自分のフレーズ作りに時間がかかったのです。これはソロでジャズを唄うというのは、オリジナルの譜面に書いてあることが出来ただけでは駄目だと言うことです。

Fakeという言葉があります。Ad libともいいますが、もとのメロディや譜割を変えて唄うことをいいます。これはBe-bopが生まれる1940年代の半ばにバップの歌手により始まりました。歌がメローディを追うだけでなく、コードの中で自由に自己の表現をするのです。

コーラスも難しいですが、ソロも自分のフレーズを創り上げるには相当な練習が必要だと言うわけです。それでないとジャズにならないのです。

「師匠、この歌、もう何ヶ月やったかなぁ」
「だって、自分で満足していねぇじゃないか、邦ちゃん」

わかっているんですねぇ、師匠は。

1stコーラスは譜面に忠実に唄えばいいのですが、2ndコーラス以降は自分の歌を歌うのです。師匠のフレーズを真似するだけでは、自分も師匠も面白くありません。そんなことをしていると、1曲に6ヶ月かかるわけです。アドリブで唄うというのはこのことです。アドリブとは即興ですが、脳みその中が空では何も出てくるわけはありません。いろいろなインプットをしておくと、それらのものが結合された形の結果が即興となってアウトプットされるのです。

その1年は、2曲のレッスンでお仕舞いになりました。もう1曲は何かって?

”Paper Moon”ですよ。私にとってこんなに難しい歌はありませんでした。

コーラスだけやっていたのでは、ジャズコーラスは上手になれません。ソロを勉強してください。大変な注文だということは分かっていますが、そこから面白いことが始まるのです。同時にソロだけやっていたのでは、サウンド感覚が乏しいので、アドリブなど自分で作り出せませんし、楽しいアレンジも出来ません。

ある時、ピアノの間奏にスキャットを絡ませました。それが、ピアノのアドリブといいハーモニーを作り出したのです。ピアニストが「さっきのはよかった」と言ったのですが、唄ったわたしは同じことが出来ません。偶然に出てきたのもで歌ったとたんに忘れ去っていたのです。

わたしは若い時代はコーラス、ハーモニー作りばかりしていました。その後、20年ばかりは基本的にはソロで唄っていました。現在は、欲張って両方です。

若くしてこれを実践しているのはStarlight Junctionです。ですから、彼女達のコーラスは面白いのです。聴いたことがない人はライブを聴いて御覧なさい。私の言っていることが分かります。彼女等の応援団長はわたしで、技術顧問は栗本で練習には出かけて行きます。

そんなわけで、私のアレンジはこれらのことを考えながら書いているつもりです。ソロで唄うようなフレージングのコーラス、これが私のアレンジの一つの目標にしたいことです。オージーサンズのレパートリーには、そんな曲が何曲かあります。

おいおいFJSのアレンジにも取り入れて行きたいと思いますが、楽しみにしていろいろなパターンのジャズコーラスを積み重ねていきましょう。

わかG 

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