ジャズ・コーラス考 ジャズ・コーラスとは何だと思いますか?まず、「ジャズ」と「コーラス」という2つのキーワードがあります。 この2つの要素を盛り込んでいなければ、ジャズ・コーラスではありません。 おそらく、過去に名を上げたジャズ・コーラスのグループもこのことで悩んだのではないかと思っています。2重唱、3重唱または4重唱で唄えば、これはそれだけでコーラスであります。したがって、ジャズであることを何で、何処で主張するのかということになります。 ■ボズウェル・シスターズ(Boswell Sisters)はニューオリンズジャズのラッパの音を模写して唄っています。生まれたばかりのジャズ・サウンドをまねして「ボズウェル・サウンド」が出来上がっています。昭和10年頃に2人が引退して、それ以後は唄っていません。 ■ミルス・ブラザース(Mills Brothers)はバーバーショップ・コーラスにスイングの要素を取り込んでジャズ・コーラスのひとつのスタイルを完成させました。ジャズ・コーラスの元祖と言っていいでしょう。それを昭和5年前後に、日本で歌ったグループがいるのです。コロンビア・ナカノ・リズム・ボーイズというのです。中野忠晴という作曲家で、日本でのジャズ・コーラス第1号です。 ■パイド・パイパース(Pide Pipers)のアレンジはトミー・ドーシー楽団のマット・デニスやポール・ウェストンらが書いています。フルバンドの編曲の要領をコーラスに取り入れました。サックス・セクションの音の動きと同じだと言えます。 ■フォー・フレッシュメン(Four Freshmen)もスタン・ケントンに出会い、楽団のアレンジャー、ピート・ルゴロが編曲するまでは、泥臭いコーラスをやっていたのです。コーラスに当時流行りだしたテンション・コードをふんだんに取り入れることと、自分たち自身がジャズ・コンボでバックをつけるというスタイルでジャズの要素として取り入れたものです。とにかく気持ちよいハーモニーの動きを重視しています。コーラス好きは一度はやってみたくなります。 ■ハイ・ローズ(Hi-Lo's)は、特殊なハーモニーを完璧に唄うことを目指すユニークなグループでした、後にシンガーズ・アンリミテッド(Sigers Unlimited)になり、混声へと編成が変わり、しかも、ダブルで8声のアレンジになりました。極端に言うと、8声ということは、例えばドレミファソラシドでハモれということです。こんなことを考えたのはリーダーであるジーン・ピュアリングという変人アレンジャーです。彼等の命はハーモニーだけです。 ■ランバート・ヘンドリックス&ロス(Lambert, Hendricks & Ross)は、完璧なジャズ・コーラスの道を切り開いたものと考えます。3人のグループなのですが、ハーモニーの厚さの点では、4人のグループに負けます。彼等はどうしたのか。4人目がいると、うるさくて邪魔になるようなアレンジをしたのです。特徴的なのは、3人が別々にソロのジャズ・ボーカルを唄っているのです。デビュー盤の”Mornin'”には世界中が度肝を抜かれたものです。ヴォーカリーズをコーラスにとりれたのは彼等が最初です。 ■マンハッタン・トランスファー(Mahattan Transfer)は、4人中3人がオリジナルメンバーのまま活動中ですが、実力No.1と言っていいでしょう。この人たち一人一人がジャズ・ボーカリストであり、ヴォーカリーズにも長けています。その意味では、ランバートのグループの跡継ぎといえます。また、アカペラもよくやってくれました。この意味ではジーン・ピュアリングのやったことを引き継いだとも言えます。要するに、何でも唄ってしまう恐ろしい人たちです。コーラスがやれる、譜面が読めるだけでは彼等のコーラスを真似するのは大変です。 ■さて、わかGは近頃何がやりたいのか、ある課題を持っています。第1は、ジャズにはインプロビゼーションという即興性が大きな要素です。ジャムセッションではソロを回す時、それぞれがアドリブで演奏しなければなりません。コーラスでソロを回す時は、これが出来るはずです。しかし、アンサンブルではなかなか難しいわけです。そのアンサンブルの中で、どれだけ即興性を見せるかを考えています。最近、そのひとつの糸口が見えてきました。その手法を使って、これから試していこうと思っています。第2は、あくまでジャズボーカルであることです。つまり、1人で唄った時、ソロボーカルのジャズボーカルと同等でなければならないという条件です。そういう意識でアレンジしたものをいくつかやってみようとやりだしたところです。上手く実現できると面白いのですが。 コーラス・グループは何百もありますが、ジャズ・コーラスと呼べるものは一握りしかありません。 わかG |